自分の想いをカタチにできる仕事
いつか人生を変えるようなクルマを作りたい
「どうしてもエンジンが作りたかったんです」。と語るのはガソリンエンジンの燃料系部品の設計に携わるエンジニア、下川祐輝さん。高校を卒業してすぐにマツダへ就職し開発部門へ。すでに10年のキャリアがあるが年齢はまだ28歳という若手エンジニアだ。そんな彼をクルマづくりの世界に飛び込ませたのは幼い頃の出来事だった。「叔父がレースをやっていて、サーキットに連れて行ってもらったことが度々ありました。その体験で、僕の人生が変わってしまいました。助手席に乗せてもらった時の加速、音、におい、すべてに感動しました。次第にエンジンにも興味が沸き、その仕組みが知りたくなり、クルマのことをいろいろ調べ始めました。そして自動車科のある高校へ。その後この会社に就職をすることになったというわけです」。
下川さんは入社後、エンジンの実験部門に在籍しロータリーエンジンの開発に従事、その後設計部門へと移った。エンジンを作りたいという彼の夢はいとも簡単に実現してしまった。「面接の時からエンジンが作りたいとアピールをしました。それですぐにロータリーエンジンの開発に携われたのですから、本当に幸せ者ですよね。でもエンジンを作るのは想像以上に大変な仕事でした。いま携わっている設計の仕事も、最初は図面を書くだけだと思っていましたが、実際にはどういうエンジンを作りたいかという作り手の想いやものづくりへの情熱が求められるのです。そういった想いがないと良いものは産み出せない。エンジン1台とっても100人を超える設計者と多くの部品会社のエンジニアが関わっています。設計に携わる全員がもっと良いエンジンを作ろうという高い意識を持っていて、こだわりや想いをぶつけ合って作り込んでいきます。自分自身で担当する部品を持っていたら、年齢など関係なく、ベテランエンジニアと時にはぶつかり合いながらものづくりをしていかなければならないのです」。
年齢的にもキャリア的もまだ苦労の連続という下川さんだが、それでもこの仕事に正面から向き合えるのには理由があるという。「自分が設計した部品が手元に届き職場の仲間と品定めする時は楽しいですね。そしてその部品が実際のエンジンに組み込まれ、目の前ではじめて始動するという瞬間に立ち会えるんです。壊れませんようにとドキドキする瞬間ですが、エンジンが無事に動き始めるといつも感激します。学生時代に自分で組み立てたエンジンが動いた時に僕はこの世界でやっていくと決めました。あの日と同じ感動が味わえるんです。ここに到達するまでの苦労はありますが、自分の想いをカタチにできるというこの瞬間のためなら頑張れます」。
エンジンの開発に携わって10年、下川さんに今後どんなエンジンを作ってみたいかと聞いてみるとこう答えてくれた。「エンジン作りという点では大前提として楽しさと環境性能、安全性能を兼ね備えたエンジンを作っていきたいと思っています。その先にはお客さまに乗っていただいて”なんかこのクルマで走っていると楽しいね”と感じてもらえるようなエンジンを作りたいですね。自分がクルマ好きになった時のようにクルマにはその人の人生を変える魅力があると信じています。ですからひとりでも多くの人にその魅力を感じてもらいたいです。もっとクルマが好きになる、走るほどに愛着が湧く、そして手放すときにはこのクルマに出逢えてよかったなと思ってもらえるようなクルマを産み出していきたいです」。