クルマには人の心を動かす力がある
私は塗装でクルマの魅力を伝えたい
若手エンジニアがその持てる技術を競いあう技能五輪全国大会の車体塗装部門で金メダルを獲得した山本
香澄さん。高校を卒業しマツダへ入社して1年目から技能五輪全国大会への出場を認められたのも異例ながら、
2年目にしてマツダの女性社員として初となる金メダルを獲得するという快挙を成し遂げた女性エンジニアだ。
「技能五輪全国大会について知ったのは入社してからです。話を聞いて女のひとでも活躍できる!これはやるしかない! とすぐに思いました。とにかく負けず嫌いなので、ここで一番をとって有名になってやろうと決心しました。その日から3年間、私はマツダの代表として技能五輪全国大会に挑戦してきました。この大会には様々な競技カテゴリーがあるのですが、私は車体塗装部門での大会制覇に向け技術を磨く毎日でした。学生時代はバレーボール一筋だったので、もちろん塗装なんてしたことありませんから会社に入って初めて体験するものでした。でもそれは男女関係なく周りもみんな同じですからね。全員がゼロからスタートするのだから、ひと一倍頑張ってスキルを磨けばトップになれる。とにかく頑張るしかないんです。負けず嫌いの私にはぴったりでした」。
塗りだけでなく、色合わせや修復技能など、塗装の技能は長い経験により磨かれていくもの。それをこの短期間で身につけるには相当な努力と苦労があったことは容易に想像できる。「センスもあるけど、どれだけ自分を追い込めるかでしょうね。でもどれだけやっても結果がついてこないことはあるので、そういう時は苦しいものです。一番苦しかったのは金メダルを獲った後でした。2年目で金メダルを獲った私は3年目一転して追う立場から追われる立場になりました。みんなから見られるし、マツダの中では当然一番でいつづけなければいけない、周りの期待も大きくて、ものすごい重圧でした。とくに世界大会への出場権もかかった3年目だったので、精神的にきつかったです。こういう時っていくら頑張って訓練をしてもうまくいかないし、ダブルパンチでしたね。そんな時、職場の仲間が『香澄は自分を追い込んでいくのがすきやけ、すきでやっとることなんだよ』と言ってくれたんです。その一言で、あっそうか!と吹っ切れて、自分ができることをやりきって大会に臨むんだと気持ちを切り替えることができました」。
技能五輪に参加した若手エンジニアは次世代エンジニアの育成などを担当することが多いというが、山本さんは3年間の努力とその取り組みかた、そして実績によって現在は塗装工場の現場に配属されている。今後すべての塗装領域を経験し、マツダの塗装エキスパートを目指すのだという。「マツダで仕事をするようになってクルマの見え方が大きく変わりました。クルマには人の心を動かす力があるし、会社に入ってこんなに多くの人によって1台のクルマが作られていることを知りました。塗装はもちろんですが、それぞれの職場がいろいろなこだわりをもっています。技能五輪から今の仕事に変わり、そのクルマづくりの一員になれたことは本当に嬉しいです」。
「マツダって色にもこだわりをもっている会社なんです。でもこのことを知らないひとって沢山いるんです。私の家族ですら知らなかったんですから。もっとマツダが色にこだわりをもっていることを知ってもらいたいんです。そのためにも私自身がもっと色や塗装にこだわらなければいけないと思っています。いまはまだまだですが、頑張ります! 」。