Hitomi Ohira

“もっと良いクルマ”を作るために
領域を超えて議論できる開発者になりたい

大平 仁美さん / Hitomi Ohira

大平仁美さんは制動性能開発グループでアテンザのブレーキ開発・実験を担当する開発者だ。大学と大学院で物理学を学んできた彼女は、自動車部に所属していたわけでも、クルマに対して特別な想いがあったわけでもないが、あえてマツダで自動車の開発をするという道を選んだ。

「小さな頃はよく父とF1を見ていましたし、ドライブにでかけると父がすれ違うクルマの車名を教えてくれた記憶があります。でもクルマとの接点はその程度でした。入社時点ではクルマに関する専門的な知識はほとんどありません でしたから入社してからかなり勉強しなければなりませんでした」。マツダに入社すると大平さんは実験部門への配属希望を出した。物理学とは畑違いではあるが、実験をしてその数値・データーを分析することが好きだったことがこの選択を決めたのだという。しかし実験部門では知識や数値の分析力だけでなく、それを評価できるだけのドライビングスキルも求められる。「マツダには開発者のドライビングライセンス制度があり、そのライセンスを取得するためのトレーニングも行われています。開発者はそれぞれ与えられた職務に応じて必要となるドライビングスキルを身につけて行くのですが、私は運転することこそ好きだったものの、実はホント素人で…社内で坂道発進の練習から始めたくらいです。しかしいまでは社内の最高ライセンス取得を目指してトレーニングできるまで成長することができました」。

ブレーキの開発はとても難しい。ただ単純に効きをアピールするだけではなく、マツダの掲げる“人馬一体”を実現するために他の性能との両立、バランス、役割分担がとても大事になる。あらゆる部門が力を合わせその開発に取り組んでいるのだという。「いま私たちが作ろうとしているのはごく自然なブレーキです。クルマ全体の動きと人の操作・感覚が自然と合うブレーキ開発を行なっています」。人を知り、そのクルマが使われる環境をより深く理解する ため大平さんは海外でのテストにも参加するという。「私たちは量産前にそのクルマが販売される世界各国の環境でその適合性を評価しています。これが時差や気候だけでなく、文化の違いもありよく苦しむことがあるんです。新工場立ち上げに絡んでテストに出かけたメキシコでは体調まで崩してしまい大変でした。しかしその苦しさの半面、それぞれの国の文化やクルマの使われ方を勉強できるので、自分自身の仕事にはとても役立ちます」。

入社12年目、大平さんのクルマづくりのゴールは"もっと良いクルマを作りたい"ということ。「実験という立場からすると、ブレーキだけでなくクルマ全体を評価できる人間になりたいと思っています。それにはもっともっと勉強が必要で、専門的な知識もドライビングスキルも求められます。さらに高みを目指すという、私個人の成長目標があります。ブレーキの担当ではありますが、領域を越えて様々な開発者と議論できるようなエンジニアになりたいですね。そんなエンジニアになれれば私が想い描いている本当に良いクルマが作れると信じています」。

車種の主担当となって3年目。今では少しづつ他の性能も見ることができるようになってきた。「やっと掴んだ車種担当の仕事です。ようやく仕事にも慣れ、楽しくなってきました。これからもっともっと楽しくなると思います!」。

Hitomi Ohira

大平 仁美さん / Chassis Dynamics

車両開発本部 操安性能開発部 制動性能開発グループに所属し、アテンザのブレーキを担当する女性エンジニア。実験ではブレーキの分解もしばしば。最初は苦戦したタイヤ&ホイールの脱着も、いまでは18インチサイズでもスムーズにできるようになってきたという