Tatsunori Iwahara

行き詰まったらがむしゃらに絵を描く
それが答えを見つけるための近道

岩原 龍象さん / Tatsunori Iwahara

「小さな頃から絵を描くことが大好きでした。絵を描くのが好きといっても写実的な絵はあまり好きではなく、いつも自分が想像したものを描いていました。そんな僕がクルマに興味をもったきっかけはグランツーリスモ(TVゲーム)でした。僕らの世代はみんなこのゲームに夢中になりました。それまでのゲームとは違い、そのリアルさにすぐに惹きつけられました。自由に絵を描くことが好きで、そしてクルマも好き、僕がカーデザイナーを目指したのはごく自然な流れでした」と語るのはインテリアデザイナーの岩原龍象さんだ。

カーデザイナーの花形といえばエクステリアデザイナーだが、岩原さんはマツダに入社するとエクステリアデザイナーではなくあえてインテリアデザイナーへの道を選択した。そしてデミオのメーターデザインに始まり、アクセラやCX-5、アテンザなど各モデルのインテリアを担当。アテンザのマイナーチェンジではインパネ・コンソールのデザインから量産に落とし込むまでのプロセスに関わり、最近では新型CX-5のインテリアデザインも担当した。「インテリアデザインは要素が多く、とにかく難しい世界です。その半面とてもクリエイティブでもあるのです。ですからとてもやりがいのある仕事なんですよ。自分が提案したデザインに対して共感をしてくれる人がいて、それが部内で承認され、最初のスケッチが3Dデータになり、クレイモデルに変わり、試作車を経て量産車になる。こういったものづくりの流れをリードするカーデザインの仕事はとても楽しいものです」。

しかしカーデザインの仕事には楽しさと同時に常に産みの苦しみもつきまとう。岩原さんもこれまでに何度もその苦しみを乗り越えてきたという。「何回提案してもダメな時があるんです。デザインは数字で表すことができないし、アイディアは無限にある。自分はもっとこうしたいと思っているのにそれができない。そんな状態に入るとそこから抜け出すのが本当に大変なんです。そんな時、僕はとにかくいっぱい、がむしゃらに絵を描くことにしています。絵を描きながらデザインの幅や方向性を探り、仲間や先輩に見せながら認識を合わせていくのです。どんなことでもそうだと思いますが、既成概念があるとどうしても発想や視野は狭まります。そういう苦しい時こそすべてをリセットして、あらゆる方向を見渡しながら実際に手を動かし、ひとつの答えを見つけていくことにしています」。

新しいCX-5は、走り、安全性、そしてデザインと全方位での深化を遂げ国内外で高い評価を得ている。もちろんそのなかには岩原さんが苦しみを乗り越え生み出した美しいインテリアデザインも含まれている。「購入されたお客様と直接話をする機会は少ないですが、クチコミサイトなどに投稿された良い評価は自分たちが意図したことを感じ取ってもらえている証拠だと思っています。本当に嬉しいですね。それと同時に次はもっと期待を超えられるものを作らなくてはいけないなと思います」。

「マツダのデザインというと多くのかたがエクステリアデザインを思い浮かべるでしょう。近い将来、エクステリアだけでなくインテリアも同時に評価してもらえるように僕たちは頑張っていかないといけません。そしてインテリアデザインを極めたいからマツダに入って挑戦したいという人がこれからもっと増えるといいなと思っています」。

Tatsunori Iwahara

岩原 龍象さん / Design

デザイン本部 プロダクションデザインスタジオ インテリアデザイングループに所属するインテリアデザイナー。直近では新型CX-5のインテリアデザインを担当した。インテリアのアクセントとなっているエアコンルーバーのデザインは相当苦労して作り上げた部分だという